日本のナチュラルチーズが大集合
現在、日本にはチーズ工房がどれだけあり、どんなチーズがつくられているか、知っている人はまだまだ少ないでしょうね。日本のチーズといえば、1970年代あたりまでは大手乳業会社の独壇場で、生産されるのはほとんどがプロセスチーズでした。その後小さなチーズ工房ができ、ヨーロッパのチーズに学びナチュラルチーズをつくりはじめます。そして、時代が進むごとにチーズ工房が全国に名乗りを上げ、個性ある手作りチーズを次々と誕生させるとともに、それらの品質も高まっていくのです。
チーズプロフェッショナル協会ではこうした意欲ある生産者を応援し、消費者と直接つなぐイベントとして、全国のチーズ工房から自慢のチーズを出品していただき、これを一堂に集め「日本の銘チーズ百選」というイベントを隔年ごとに開催してきました。
更にはこの日本産チーズの祭典ともいうべき催しに加え、2014年から国産ナチュラルチーズコンテスト「Japan Cheese Award」が加わり、銘チーズ百選の試食会場では、前日に審査され各賞を獲得したチーズの発表が行われ、会場をさらに盛り上げるのです。
現在国産のチーズ工房は大小含めて全国に280以上あるといわれています。そんな中から今年(2018年10月20~21日)は78工房から実に233点が出品されました。これだけ多いと審査員達の仕事も大変です。しかし日本の銘チーズ百選を楽しみに参加する一般のお客さんにとっては、全部試食するのは不可能としても、国産の優れたチーズを知る数少ない機会でもあるのです。
このイベントも年々知名度が高まり、お客さんの動員数も増え続け、今年は600人以上のチーズファンが詰めかけ会場は一時、満員電車状態になりました。そんな中でコンクールの審査発表が行われると会場はその都度騒然となり、受賞したチーズの前には行列ができるなど、終始にぎやかな雰囲気で会は進んでいきます。こうした光景を見るにつけ、年々一般消費者のチーズへの関心の高まりを実感すると同時に、日本産チーズの品質の向上、そして、その豊かな独創性に大きな期待を抱かせてくれるのです。
今回は農水省の力添えもありEU代表部を初め、ギリシャ、スイス、オーストラリア、そしてアジアからは台湾とインドネシアの大使館関係者が来場し絶大な好奇心を持って、東アジア唯一のチーズ大国?のチーズを試食したようです。そして、聞くところによれば、彼らは口を揃えて、日本のチーズの品質の高さとユニークさを、驚きをもって賞賛したといいます。日本産チーズの優秀性は、すでにヨーロッパのコンクールなどで上位を総なめという快挙も成し遂げているのですが、一般消費者にはほとんど知られていないのです。今回の出品チーズの中には、味噌、醤油、酒など「和」のテイストを表現したチーズが多く見られたけれど、いま世界的にブレークし関心が高まっている日本料理にあやかって、こうした和風の味わいのチーズも一つのジャンルとして追及すれば面白いかも知れません。
余談ながら、チーズの祭典の数日後、東京有楽町のガード下の飲み屋で、チーズに秋田の燻製沢庵ともいうべき燻りがっこを混ぜた「いぶりがっこ入りクリークチーズ」に出会いました。一杯飲み屋のチーズ料理も進化し続けているのです。