フロマGのチーズときどき食文化

遥かなるヨーグルトの道

2017年7月15日掲載

ヨーグルトの語源はトルコ語

乳製品の中で最も古いものといえばヨーグルトでしょうね。山羊や羊などの野生動物の群れを家畜化したのは今からほぼ1万年前で、その発祥の地は西アジアのトルコ南東部だそうです。そして、これらの動物のミルクを食料にするようになったのは、それから千年後(最近では五百年後という説も)だそうです。

キャプシ屋台で売るヨーグルト

面倒な年代の考察は置くとして、ともかく羊や山羊を飼いならしそのミルクを器に搾り取った時にヨーグルトが誕生した。乳文化研究家の平田昌弘氏は「ミルクのヨーグルト化は搾乳が始まった時点で運命づけられていた」と自著「人とミルクの一万年」に書いています。つまり、器に搾り取られ、貯め置かれたミルクは、気温が高ければ、繁殖力の強い乳酸菌は急速に増え、ミルクの中の乳糖を分解し乳酸を作りミルクを酸っぱくします。この酸によってミルクは固まるのです。これがヨーグルトの誕生です。そしてこのヨーグルトは、やがて西アジアから数千年かかって世界に広まっていきました。

現在、世界に通用しているヨーグルトという言葉はトルコ語のヨウルト(yoğurt)からきているんだそうです。

朝食にも大量のヨーグルト

最近日本でもヨーグルトの消費量も増えてきましたが、かつてプレーンヨーグルトと称した現在のヨーグルトが発売されたのは1970年代の初め頃だったでしょうか。それまではヨーグルトといえば、ゼラチンで固めたプリン状の甘いものだったのです。従って欧米並みの、酸っぱいだけのヨーグルトが発売されたときは、あの饐(す)えた匂いが敬遠されたのです。冷蔵庫がない時代、夏場などにはご飯が発酵して饐えた匂いがしたら食べるなと言われた。その記憶がヨーグルトの匂いで呼び覚まされたのでしょうか。
そこでメーカーはヨーグルトに砂糖を添付したり、健康効果を強調したりして普及に努め、現在に至っているのです。

胡瓜のサラダ、ジャジュック

先年、このヨーグルト発祥の地と目されるアナトリア半島(現トルコ)を旅した時、様々なヨーグルトに出会いました。原料乳は山羊、羊、牛と味のバラエティも豊かです。どこへ行ってもヨーグルトがありました。屋台で写真のようなホイップクリーム状のヨーグルトを売っていたりします。定番のジャジュックというヨーグルトときゅうりのサラダにも何度か出会いました。ヨーグルト発祥の地トルコは今もヨーグルト大国なのです。

遊牧民のヨーグルト

これまで最も感激したヨーグルトは、モンゴルの遊牧民の少女が作ったもの。牛糞を燃やしてミルクを温め、薬指で温度を測り、前日のヨーグルトを少し加えて一晩発酵させる。少女が作るこの素朴なヨーグルトも、西アジアを出てユーラシア大陸を何千年も旅して、このモンゴル高原まで到達したのでしょう。そしていまここにあるのです。