フロマGのチーズときどき食文化

不思議なふしぎなチーズたち

2020年1月15日掲載

不思議なふしぎなチーズたち

 ヨーロッパのチーズを訪ねる時、まずは、その国や地方を代表するA.O.P.とかD.O.P.(原産地名称保護認証)のチーズを作る現場を目標に、旅に出るのですが、これらのメジャーなチーズは情報もあり、製造現場もおおむね整然としていて、現場では資料を貰い数枚の写真を撮れば事足りるのです。でも、これらのエリートチーズは、販売は容易なでしょうが、製造基準が厳しく決められていて、けっこう大変らしいのです。従って、生産者はこれらのチーズは適当な量を生産し、後は地元の消費者に好まれる何種類ものチーズを作っている。それらのチーズは地元でなくては入手困難なのですが、それがとてもユニークで面白いものが多いのです。筆者がこの様なチーズを撮り始めてからもう30年以上になるだろうか。今回はそんな中から、少々奇っ怪な面白いチーズをお見せしましょう。

1.座布団型のイタリアのチーズ

 1点目の写真を見てください。野球の一塁ベースほどの大きさの座布団型のチーズです。これは、フランスと国境を接する北西イタリアのムラッツァーノ(Murazzano)という小さな村の工房で撮ったもの。この工房は村と同名の羊乳製のD.O.P.認証チーズを作りながら、このような奇っ怪なチーズを作っているのです。作り手はなんと女性なのです。チーズ名は分かりませんでしたが、味はといえば姿形に反し、まあまあ普通でした。

2.不思議な質感のスペインのチーズ

 2点目の写真は、北スペインのバスク州の小さなチーズ工房で造られている牛乳製のチーズです。「ピレネー越えたらアフリカだ!」とナポレオンが言ったといいますが、イベリア半島はほとんどが乾燥地帯なのに、北部のビスケー湾沿いは緑のスペインと呼ばれ、草地と林に覆われたなだらかな丘陵地が続きます。そんな田舎の道沿いに、いかにも美味しいチーズを作りそうな一軒家のチーズ工房があり期待したのですが、出てきたのが写真のようなチーズばかりなのです。なんでこんチーズが、という言葉が出そうなものかりなのです。写真のチーズは出荷直前のもので、包装はきちんとしているけれど、チーズの質感は丸太で作られたまな板と同じですよね。どんな人が食べるのでしょうか。

3.名も知らぬ三角柱のチーズ

 3点目の写真は相当前に撮ったものですが、その正体はいまだによくわからない。ロワール川沿いのチーズ工房で、かの有名なシェーヴルのサント・モールやヴァランセなどと一緒の熟成室にあったチーズです。先の2種類のチーズはA.O.P.取得しているけど、この三角柱型の灰かぶりは、調べても名前すらわからないのです。知っている人は教えてください。
 それに反して4点目のチーズはどうでしょう。イタリアのチーズですが。いかにもふっくらと柔らかそうですが、長さは30cm以上あり迫力満点です。これがチーズ盛り合わせの中に鎮座しているとビックリします。

4.巨大なイモムシのようです

このチーズはトスカーナの市場で初めて見ましたが、プライスカードにはPasta Filataと書かれていましたから、モッツァレッラと同じ生地でできているのですね。それはともかく、巨大な姿のまま他のチーズと一緒にプラトーに乗ってくると、日本人はド肝を抜かれて手が出ないのです。
 5番目のチーズはさほど変ではないけど、間もなくバレンタインの日がやってくるので、北フランスのティエラッシュ地方でつくられている、ハート型のチーズを紹介します。日本ではバレンタインのチーズといえば、ノルマンディーの白カビでハート型のクール・ド・ヌーシャテル一辺倒ですから、このウォッシュ系のCoeur de thiéracheなんかいかがでしょう。けっこう濃厚な味がしました。でも日本では見かけたことありませんけど。

5.バレンタインにこんなチーズはいかが












©写真:坂本嵩/チーズプロフェッショナル協会
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