フロマGのチーズときどき食文化

日本の手作りチーズ大集合

2019年11月15日掲載

日本の手作りチーズ大集合

1. 日本のチーズ大集合

今年の10月末の2日間、東京都中央区芝のホテルで日本最大級の国産チーズのイベントが開かれました。そのタイトル名は「ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」。主催は「一般社団法人・中央酪農会議」という団体です。このイベントは2年おきに開催されてきましたが今年で12回目になりました。C.P.A.は、これまでもこのイベントをサポートしてきましたが、今年は国産チーズ競争力支援対策の補助金事業として、これまでにない規模で開催されることになりC.P.A.も後援団体に名を連ね、この画期的なイベントの現場を全面的に支援したのです。

2. 花びらのように削って食べる「フリル」

折からのチーズブームを背景に、国内のチーズ工房は増え続け、現在では300戸を超えたと、このイベントの主催者が開会挨拶の中で述べていましたが、そんな中から、今回は86の工房から200種類を超えるチーズが出品されました。工房の数と出品数を過去の実績と比べてみると、10回目は66の生産者から148作品、11回目は73工房から161作品という実績だから今回の参加団体と出品数は過去を大きく上回る規模になりました。しかし、これほど多くの工房で、これほど多くの優れたチーズが造られている事を一般人にはほとんど知られていないのです。そこで主催者は国産チーズを消費者に広く知らしめ、消費拡大につなげるという目的のため、今回は無料で1000人の試食者を募ったのです。その結果、試食会場の大ホールはいっぱいになり、お目当てのチーズにはなかなか行きつけないという現象が起こり、特に受賞チーズの前には行列ができていました。

3. 超絶技巧の名品「じゅくし柿」

筆者も初期の頃からこのイベントを見てきましたが、当時はチーズの審査と表彰式がメインで、最後は関係者だけのパーティーをささやかに開いて修了というのがこのイベントのスタイルでした。しかし、せっかく全国から自慢のチーズが東京に集まるのだから、国産チーズを一般消費者にも知らせようと、C.P.A.ではコンテストと同じ会場に試食コーナー
を設置し、一般消費者を有料で参加してもらう事を提案し実行してきました。以後このコーナーは消費者と生産者との交流の場となるのです。そうした経緯を経て、今回の大試食コーナーが実現。これほど多くの人が一時に全国のチーズを味わったのは、おそらく今回が初めての事でしょう。

4. エゾ松が香る「茂喜登牛=もきとうし」

このイベントは今回が12回目で24年経ったという事になりますが、この間に日本の手作りチーズは急速に進化、飛躍してきました。日本人特有の細やかな感性と確かな技術。加えて旺盛な創作意欲を背景に、歴史的にいえばヨーロッパとは比較にならない短期間で、本場ヨーロッパの関係者も驚く個性豊かなチーズを次々と作り出しているのです。
しかし、今回出品されたチーズを見ると、本格派を目指した物や、超絶技巧を駆使したユニークな作品ばかりでなく、ユーモラスな遊び心を発揮したほほ笑ましいチーズもあり、チーズ職人の並々ならぬ自信に加え、心の豊かさを感ずるのです。

5. 十勝川で温泉浴した「ラクレット」

写真のチーズは今回のコンテストで上位入賞を果たした4作品ですが、そのうち2作品がこの夏、朝ドラで沸騰した北海道十勝地方のチーズでした。そっと書添えますが十勝は筆者が生まれ育った故郷です。





©写真:坂本嵩/チーズプロフェッショナル協会
*禁無断転載