世界のチーズぶらり旅

イングランドの温泉地と古城ホテル

2016年2月1日掲載

ロンドンのチーズ専門店

チェダーやスチィルトンなど、世界に知られるチーズがある割には、日本でイギリスのチーズにお目にかかる機会や、それを語る人はフランスやイタリアのそれと比べると実に少ない。確かに我々もこの国のチーズを話題にすることはあまりないが、イギリスにだって多彩なチーズが存在する。ローマ以前からチーズが作られ2千年以上の歴史を持つイングランドでは今も個性的なチーズが沢山作られている。今回イングランドチーズ探訪の旅に出発する前日、それを実証するために、ロンドンのチーズ専門店を訪れた。その時の写真がこれ。ほんの一部だが、どうだろうこの迫力。

ブライドル・ウェイを往くサイクリスト

翌日バスでイングランド南西の都市、ブリストルを目指して一路高速道路を走る。緑豊 かなイングランドを、高速で走るほど味気ないことはない。美しい風景は瞬時に後方に飛んで行く。40kmほど走ってやっと曲がりくねったイングランド特有の田舎道にバスは降りた。ゆるやかに波打つ丘陵は、濃い緑の林に縁どられた草原が広がり、そこには羊の群れが放たれている。イングランド特有の穏やかな風景だ。田舎道は曲がりくねっているからバスは緩やかに走る。そんな風景の中、牧草地や畑の中の小道を、ハイキングを楽しむ人や自転車でツーリングをする人をしばしば見かける。

温泉の町バース

イングランドにはライト・オブウエィ(通行権=公共の権利)という、日本人にはちょっと理解しにくい制度がある。簡単に言えば特別に指定された道を、ルールさえ守れば誰でも通れる権利である。その道はしばしば私有地であったり、個人の家の軒先を通ったり、時にはゴルフ場を横切ることもある。この道には何種類かあって、歩行者用の道は「パブリック・フットパス=略してフットパス」といい、自転車、乗馬で通れる道は「ブライドル・ウエイ」という。徒歩の道は100年もの伝統があり、1000km以上のコースが設定されているというが、ほとんどが踏み固められた小道である。イギリスの田舎を旅するとき、少し気を付けてみればこれらの道をゆく人達の姿が見られる。

アフタヌーンティー

このような田舎道を楽しんいると、いきなり古代ローマのような雰囲気の町に着いた。それもそのはず、ここは2世紀にローマ人が開いた温泉町バース(Bash)である。歴史的建造物が沢山ある立派な街だが、ここに寄ったのは、近くにあるチェダー村にゆく途中に、昼食をとるためであった。少し時間が早かったので同行の人達と、とりあえず本場のアフタヌーンティーを、という事で、そのセットとチェダ・チーズの小さなトーストを取り、みんなで楽しんだ。だが、ここで手違いはあったらしく、なかなか出発の合図がでない。なんでも、ここから西に30kmほどのチェダー村のチーズ工房見学の許可が取れなかったらしい。仕方なく町を見学することにしたが、歴史的建造物が沢山あって街は美しいのだが、事前の下調べもしていないので、何を見たらいいのか分からず、あまり大きくもない町を当てもなく歩きまわり、パブでビールなどを飲んで過ごした。

蒼然とたたずむ古城ホテル

やっと出発となったが、宿泊地は近い。途中でチーズ工場の見学が入っていたが、その工場は近代的で、見学用のテラスから見えるのは、ステンレスのパイプと機械だけで、一度もシャッターが切れなかった。失われた一日目の期待は、今夜の宿シャトー・ホテルだ。 イングランド南西部最大の町ブリストルを通り過ぎやがて、バスは森の細道をたどる。と間もなく赤レンガで造られた蒼然たる古城が現れた。ま、悪くはない趣向だが、これでは夜に抜け出してパブで一杯!はかないそうにもない。翌朝は窓辺に広がる芝生で鳴き交わす鵞鳥の声で目を覚まし、ブレックファーストをタップリ堪能して早や発ちでブリテン島を北上していった。