フロマGのチーズときどき食文化

あいすくりん

2012年6月15日掲載

フィレンツェのジェラート屋さん

冷たいものが欲しくなる季節ですね。そこでアイスクリームの話をしましょう。最近ジェラートなんてイタリア風にいったりしてますが、日本では最初「あいすくりん」なんて呼んでいました。
 アイスクリームのルーツといえばやはりイタリアでしょう。すでに2千年前のローマ時代には果汁やワインを氷で冷やして楽しんでいた。山から氷河を切り出してきて使っていたのですが、いわば日本のかき氷のようなもので、卵やクリームを使った今でいうアイスクリームなどはずっと後からできたものです。最初はいまでいうシャーベット様なものでした。ところでシャーベットはイタリア語のソルベット(sorbetto)からきています。この言葉は9世紀にシチリア島を征服したアラビア人が果汁と砂糖を混ぜて冷やした物をシャルバートといっていて、これがソルベットになったということです。
 この時代はまだ液体を凍らせる技術はありませんでしたが、16世紀になるとイタリアで氷に硝石を混ぜると氷点下になるのを発見、凍らせる技術が開発されます。というわけでイタリアは「氷菓子」の先進国だったのです。イタリア語ではアイスクリーム類をジェラート(Gelato)といいますが、これは凍ったという意味です。そしてそのジェラートをフランスに伝えたのが、1533年、後のフランス王アンリ2世に嫁いだカトリーヌ・メジチです。フィレンツェの大金持ちのお姫様だった彼女は、フランスに嫁入りする時、召使いはもとより、当時最も進んだ料理技術を持った料理人達も引き連れて行きました。フランスの宮廷ではまだ料理を手で食べていた時代、フォークと一緒に食事の作法も伝えたと言われています。その時にジェラートの製法もフランス宮廷に伝えられたのです。フィレンツェのカトリーヌの実家メジチ家には北欧から氷を船で運んできて常に蓄えてあったというからすごいですね。

日本のアイスクリーム発祥の地

さて、我々が馴染んでいるアイスクリームという言葉が初めて使われたのがアメリカだという事です。文字通り凍らせたクリームという意味ですね。アメリカでは余ったクリームを利用して1851年にはアイスクリームの工業化が始まります。
 日本人が最初にアイスクリームを食べたのは幕末に咸臨丸でアメリカに渡った福沢諭吉の一行だったようです。それからほぼ10年後に、やはりアメリカに派遣された町田房蔵という人が横浜の馬車道に氷水屋を開き「あいすくりん」を売り出したという事です。今から143年前ですから、原料の牛乳や卵などは貴重品だったので、出来上がったあいすくりんはとんでもなく高くつき、あまりあまり売れなかったとか。ということで横浜の馬車道商店街にある、アイスクリーム発祥の地と称するに所に行って見ましたが、そこには、あまり関係のなさそうな「太陽の母子像」なるモニュメントがあるだけでした。

スペインのチーズを使ったアイスクリーム

アイスクリームのおいしさを決めるのは乳脂肪や乳蛋白ですが日本の法律ではミルクの脂肪が8%以上なければアイスクリームと呼べないことになっています。それ以外においしさの決め手になるものがありますが何だと思いますか。それは空気です。ソフトクリームの滑らかさは空気をたくさん含んでいるからです。脂肪と空気がないとガチガチな組織になって滑らかなおいしさにはならないのです。
 ところで、チーズを使ったアイスはあるのかといえば、あります。クリームチーズやフレッシュ・チーズを使うのは驚きませんが、スペインのある2つ星レストランで出されたアイスクリームには驚きましたね。とろとろに溶けたけっこう臭いチーズを使ってました。写真を見てください。手前が焼いて溶かした熱々のチーズで向こう側が同じチーズを使ったアイスクリームです。これを一緒に食べる。感想は?といわれれば、非常に個性的な味だったとだけ言っておきましょう。