フキノトウといえばだれもが知る春の山菜ですね。漢字では「蕗の薹」と書きます。関東以南ではもう終わりでしょうが、東北や北海道には野性のフキが多く、雪が溶けるとすぐに顔を出すのが蕗の薹です。フキノトウとはフキの花なんですよ。葉っぱの方は後から別に出てきます。さて、ここで蕗の薹の「薹」とは何かという疑問がわきませんか?
薹とは、広辞苑によれば「蕗・菜などの花茎」だそうです。別の辞典では「アブラ菜・フキなどの花茎」とあります。例えば白菜などは真ん中から蕾をつけた茎が伸びてきますが、これが花茎ということです。
更に辞書にはこう続きます。花茎が出てくると野菜は固くなって食べられなくなり、これを「薹が立った」という。更には、人に対し「若い盛りが過ぎた。年頃が過ぎた」状態を「薹が立つ」いうとあります。気分を害した人いますか。
危ない話はこれ位にして、野菜のなかでも若い葉を食べるものは、トウが立つ前に食べてしまうので普段は見る事はできません。白菜やキャベツだって青梗菜だって放っておくとトウが立ち花が咲きます。この種の野菜はアブラナ科が多いので花びらが4枚の黄色や白い花が咲きます。だいたいが菜の花に似ている。同じアブラナ科でもブロッコリーやカリフラワーは花のつぼみを食べるのもあるし、ダイコンやカブの様に根を食べるものもある。ついでに言えば、フキ、シュンギク、ゴボウ、レタス類はキク科。香りの強いセロリ、ミツバ、ニンジン、セリなどはセリ科です。
こんなこと覚えて何になるの、とい人もいるかも知れませんが、野菜は同じ科に属するものはだいたい風味が似ているから、料理の時に役に立つかもしれません。まあ何事も例外はありますけどね。ユリ科のネギ類や、ニンニク、ラッキョウは匂いが強いのにユリ根にはネギの香りはない。姿形からは信じられないのはアスパラガスが同じユリ科だという事です。ついでながらレタスやサラダ菜の方はキク科ですよ。同じ葉物でも独特の苦みがありますね。これがキク科の特徴です。
さて、この話からどうやってチーズの話に持っていくか。キク科の話が出たところで同じ科の朝鮮アザミの話をしましょう。アーティチョークです。ヨーロッパなどではよく見かけるのに日本ではめったに見られない野菜の一つですね。食べ方を知っている人も少ない。どんな野菜でも作ってしまう日本人なのになぜでしょう。ヨーロッパではいろんな種類があってイタリアなどでは、そこら中に生えてます。どこを食べるか。ある野菜辞典には若い蕾を茹でて苞(ほう)の基部と花托を食べるとある。解りますか?実物にあたらないと分からないですね。
食べるのはつぼみですが、花を咲かせたくさん出てくる糸状の雄しべを乾燥させてミルクを固める凝乳剤をとります。すなわち植物性のレンネットにするわけです。イタリアの一部やイベリア半島ではこれでチーズを作ります。