C.P.A.通信 Vol.125 p13にC.P.A.資格二次試験に出題された「ミルクとチーズは、共にさまざまな特徴を持つ優れた食品である。原料であるミルクにはない、チーズならではの特徴は何か、説明せよ。」に関する一つの考え方が掲載されています。チーズという食品の本質を理解しているかを問う問題だと書いてあります。基本的でとてもよい問題だと思います。
ここに記載された考え方の他にも「ミルク」と「チーズ」には様々な違いがあります。第一に、本来の目的が異なる点です。搾乳直後の「ミルク」は親が仔の生命と成長を確保することが目的で、搾乳直後(搾乳と同時に)摂取されます。一方、「チーズ」はヒトが利用するために加工したものです。そのために、自然発酵、スターターによる発酵、凝固剤や塩の添加、圧搾、天日乾燥、熟成などの加工を行います。それによって乳糖耐性がないヒトでも食べられる、持ち運びに便利などのメリットが生れ、農耕ができない土地でも人々は生き延びることができるようになりました。
乳等省令が定める「チーズ」は、カゼインとホエイたんぱく質の比が乳のそれより高くなっていること、そして凝固剤(レンネット、乳酸菌など酸凝固をもたらす微生物)の使用が必須条件なっています。また、ホエイを排出させますから一部の成分がホエイに移行します。一方、いわゆるチーズではリコッタやブラウンチーズのようにホエイたんぱく質の割合が高いものもあります。さらに、加熱凝固により一部成分が変化するものもあります。そのため「ミルク」とは形状、物性、成分組成、風味などが異なります。
さらに広い意味ではプロセスチーズもチーズの一種です。乳化剤を加えてカゼインミセルを溶融させることで、日本人の味覚に適した風味を提供できる、様々な形状の容器に充填できるなどメリットが多い点、そして何より戦後日本におけるチーズ消費を牽引してきた点などミルクにはない特徴です。主な違いを表にしましたので、ご参考にしてください。
「乳科学 マルド博士のミルク語り」は毎月20日に更新しています。
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