世界のチーズぶらり旅

ロワール河畔に世界のチーズ大集合(2)

2019年8月1日掲載

ロワール河畔に世界のチーズ大集合(2)
~チーズ漬けの3日間~

今回も前回に続きロワール河畔のトゥール(Tour)市で開かれた、世界最大級のプロ向けのチーズ見本市「MONDIAL DU FROMAGE」の報告である。ここで、日本人はあまり馴染みのないトゥール市について簡単に説明しておこう。
市の中心を流れるロワール河といえばフランス最長
(1,012km)の河である。源流はフランス中央高地の南部の、ライオルチーズの産地あたりとういから驚く。そこからひたすら北に向かって流れ、パリの南方100kmあたりで大きく西に折れ曲がり大西洋に向かう。トゥールはその河の下流域にあって、この地方は昔風に言うとトゥーレーヌと呼ばれその下流にポワトーとアンジューがあり、これらの区域に観光の目玉である大規模な城郭や瀟洒な城館が集中しているのである。

ポワトー風チーズ・ケーキ

そして、この地方は美食の地でもある。サケ、ウナギ、カワカマス、アローズ(ニシンの一種)など、ロワール河で捕れる川魚の料理。肉料理では、トゥールの干しプラムを添えた豚肉の煮込みやリエット、兎肉の赤ワイン煮込み等の料理がある。そして24時間のカー・レースで有名なル・マンには有名なブランド地鶏がある。デザートでは以前日本でもはやったクレメ・ダンジュとう菓子があり、片面を真っ黒に焦がしたシェーヴルのチーズ・ケーキ『 Tourteau fromagé トゥルトー フロマージェ 』が有名だ。そしてワインといえば偉大な、といわれるものはないが赤、白、ロゼと、どれも軽快で手軽なワインがそろっている。

地元の山羊乳チーズの展示

このように高名な観光地と美食が散りばめられたトゥーレーヌの三日間であったが、それらに眼もくれずに(ワインは別)、ひたすらチーズを食べ続けたのであるが、さすが、フロマージュ・ド・シェーヴルの産地である。山羊乳チーズの出品の多さと新鮮さは群を抜いていた。そんな膨大なチーズの中のほんの一部を写真でお見せする。
2点目の写真は、この地方のシェーヴル・チーズが総動員という感じのブースである。この倍くらいはあったが、カメラのフレームに入りきらなかった。見た事があるチーズも見えるが、この形の面白さバラエティの豊かさはどうだろう。並べ方も無秩序のようだが、写真にしてみると、整然と並んでいるより面白いのである。試食はしたが、これだけあるとすぐにどれがどれやら分からなくなってしまう。

北イタリアのチーズ

3点目の写真はけっこうおもしろいチーズが並んでいる。数えてみると15種類あるが、カードに書かれたチーズ名ではどこの国か分からなかったが、よく見れば真ん中あたりにTaleggioの文字を見つけて北イタリアと判明。メモをとるといっても何しろ130以上のブースに千以上のチーズだから写真撮影と試食で精いっぱいなのである。

イスラエルのチーズ

4点目の写真は初めてお目に掛かるイスラエルのチーズだ。青いダビデの星が付いた国旗が掲げられていたのでそれとわかったが、乳種は?チーズのタイプは?チーズが赤いのはなぜ?等々、関係者もおらず、試食もしていなかったので何もわからなかった。

さて、最後の写真はバターである。というと「エー!チーズの見本市じゃないの」という声が聞こえて来そうだが、この見本市のタイトルの下の方に小さくProduits Laitiers(乳製品)と書かれている。だからバターも何種類か出品されていた。もともとフランスはバター大国で、新フランス料理が台頭する以前の古典料理にはバターが大量に使われていたのである。写真のバターはサフラン入りだが様々なハーブが入ったものもあった。

巨大なフランスのバター










©写真:坂本嵩/チーズプロフェッショナル協会
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