世界のチーズぶらり旅

チーズで始まったトルコの朝ごはん

2016年1月1日掲載

列車でイスタンブルへ

数年前の事だが、アジアとヨーロッパの接点のチーズを見るべくトルコへの旅を思い立つも、トルコのツアーといえば遺跡めぐりばかりで、チーズのためにトルコに行く人などいなかった。だいいちトルコのチーズなど知る人はまずいない。そんな訳でとりあえず行くだけ行ってみようと、適当な遺跡めぐりのツアーにのっかって、まずは出発点のイスタンブルに降り立った。このツアーはイスタンブルを起点にエーゲ海沿岸の遺跡をたどり、内陸の有名な観光地カッパドキアにゆくという、定番中の定番コースなのだが、遺跡は適当に見学し、宿泊地の町の市場などに出かけてチーズを探ろうという魂胆である。

朝食に出されたチーズの一部

イスタンブルでの最初の朝、朝食のためホテルのダイニングルームに降りて驚いた。いわゆるバイキングスタイルなのだが、まず目に飛び込んでき来たのは、各種のチーズが盛られた大皿である。旅の始まりというのになんという幸運か、全部食うぞ!と勢い込んで少しずつ皿に取って食べ始めた。最初に取ったのは7種類だったがこれでも結構きつかった。先が長いので、ここで無理することはないと気を取り直し、味わいながらゆっくりと食べた。落ち着いて良く見れば、チーズにはそれぞれ名前を書いたカードが添えてあり、トルコ語はラテン文字で書かれているので、たどたどしくとも読むことはできる。

朝食に7種類のチーズ

現在のトルコの文字は、今から90年ほど前に初代の共和国大統領のムスタファ・ケマル(後のケマル・アタチュルク)が、それまで使っていたアラビア文字をやめて、いわゆるトルコ式ローマ字を採用するという大改革を行った。そのため一般人の識字率が格段に上がったといわれている。従って、我々でもちょっと勉強すれば読むことはできる。例えばトルコ語でチーズはペイニル(Peynir or Peyniri)で、トルコに多いギリシャのフェタに近い白いチーズはベイヤーズ(Beyaz)・ペイニルという。初日の朝食には、このベイヤーズにハーブやスパイスをまぶしたりしたものが数種類あった。そんな中にトゥルム・ペイニ(Tulum Peyniri)を発見し、ちょっと興奮した。このチーズはかつて遊牧民が皮袋に詰めて1年程発酵させる伝統的なもので、独特の匂いと酸味がある。クリーム色をしていて組織はもろいが濃厚な味わいである。後に地方都市のスーパーで、ビニールで真空パックされた球形のトゥルム・ペイニリを見つけた。多分、現在はこの方式が主流であろう。

ヨーグルトのサラダ、ジャジュク

さて、トルコの重要遺跡をめぐりながら、食事時はやはりチーズが頭から離れない。昼食にはあまりチーズは出なかったが、ヨーグルトはいたるところで出た。羊乳や山羊乳などで作られているのか、かなり濃厚なヨーグルトもあった。ガソリンスタンドのわきにもヨーグルトに蜂蜜をかけて出す屋台がある。トルコはヨーグルトの国でもあるのだ。トルコにはキュウリとヨーグルトで作るジャジュック(Cacık)というサラダがあるが、旅行中に一度は出会いたいと思っていたが意外と早く現れた。ある町で昼食をとることにしたレストランで、大皿に盛られたジャジュックを発見。さっそく撮影したのが4番目の写真。このサラダの材料はヨーグルトとキュウリ、それにオリーブ油とスパイスなどで、盛り付け方は好み次第。取り立てて美味というわけではないが、ヨーグルトの定番料理らしく、トルコ料理を紹介する本などにはたいてい出てくる。

バザールのチーズ専門店

アナトリア半島の西半分の遺跡めぐりを終えて、イスタンブルに戻ってきたが、この町では、やはりバザールを見なければ話にならないと、ガイドブックに書かれているが、バザールにチーズの店がある事はどのガイドブックにもなかった。しかし、探してみるとペイニルを売る店がずらりと並ぶコーナーがすぐ見つかった。