フロマGのチーズときどき食文化

イタリアの巾着型の白いチーズ

2019年2月15日掲載

イタリアの巾着型の白いチーズ

店頭のパスタ・フィラータ

チーズの分類の中でパスタ・フィラータ(Pasta Firata)というのがあります。これについては2017年にこの欄で紹介したので詳しくは書きませんが、イタリアのモッツアレッラがこのタイプの代表といえばお分かりでしょう。チーズ製造の初期に凝固したPasta(生地)を溶かして引き延ばしFilare(糸状)に裂けるようにしたチーズの事です。この種のチーズは2タイプあり、作ってすぐ食べるフレッシュタイプと、カチョカヴァッロなどのように熟成させるものがあります。

フィレンツェの古城のパーティーで

しかし、フレッシュの方はイタリアの市場などではピンポン玉位のものから、巨大なウミウシのような形のチーズが、いっしょくたにパスタ・フィラータの名で売られているのです。ちょっとしたパーティーなんかで、三つ編みの巨大なチーズがそのまんま大皿にトグロ巻いていたりして驚かされるのです。

パスタ・フィラータ系のチーズで最もよく知られているのは、言わずと知れたモッツァレッラですが、本当の本物といえば南イタリアで昔から水牛のミルクから作られる、モッツァレッラ・ディ・ブーファラ(Mozzarella di Bufala)でしょうね。でも、現在はイタリアでも普通の牛乳から作られているものが大半なのです。逆に日本で水牛を飼って本物のモッツァレッラを作っている工房もあります。
 

植物の葉で包む

筆者がイタリアで初めて水牛乳のモッツァレッラを食べた30年程前には、日本でまだこのチーズは作られていなかったのですが、C.P.A.が主催し、隔年開催される、国内チーズのコンテスト(ジャパンチーズアワード= JCA2018)に29個のモッツァレッラがエントリーされていました。初回の2014年には19個でしたから、年々その数を増やしています。
モッツァレッラは熟成させず、すぐ販売することが出来るので、販路さえしっかりしていれば工房としては非常に効率がいいチーズなのでしょう。東京渋谷の街中にできた、モッツァレッラの工房が話題になると、全国にこのチーズを作る工房が広がっていきました。

切ると中身があふれ出る

さて本題に入ります。ここ数年来真っ白い巾着型のチーズが話題になっています。調べてみると JCA2014に、この巾着型は2品エントリーされていました。その名はブッラータ(Burrata)。イタリア南部のアドリア海に面したプーリア州のアンドリアという町のあたりで、およそ100年前に生まれ、ずっとローカルの名物とされてきたチーズです。最初はモッツァレッラを生産するときに出る、生地の切れっぱしを細かく刻んで生クリームで和え、それを残りの生地で包んで巾着型にまとめた、いわば賄い飯のようなチーズだったのです。でも、生クリームが入るので本家のモッツァレッラより濃厚でおいしく土地の名物になるのですが、問題は傷みやすいことでした。そのためにある工夫をしたのです。写真のように巾着型のチーズをアスフォデルスという植物の新鮮な葉で包んだのです。そして、このチーズを買う人はこの葉っぱの鮮度を目安にチーズを選んだそうです。なんとものどかな話ですが、最近I.G.P.(地理的表示保護)を取得し製法が統一されたので、この姿は今後見る事はできないでしょう。筆者がこのチーズを最初に食べたのはプーリアの州都バーリーのホテルの朝食の時でした。その時の衝撃は今でも覚えています。あれから20数年、当時は、日本でこのチーズが作られるとは思ってもみませんでした。

日本製ブッラータ